粒や木(ツイッター)

ex-藤子文庫(モトフジ)の呟きです

藤子文庫の遠くへ行きたい

藤子文庫の喫茶スペース付店舗兼事業所をオープンして、仕事のペースが激変してしまい、なんとなく置き去りにしてしまっていたこのブログなのですが、棚の本を眺めているうちに少しずつ考えがまとまって来たような気がして、ようやく再開することにしました。

今回のタイトルは「藤子文庫の遠くへ行きたい」。鉄道関連の本がいくつか集まったので紹介したいと思います。

一冊目は「カラー版 乗り鉄バイブル」櫻田純著 中経の文庫

「カラーでたのしい」と帯にありますが、鉄道や列車に関する基本的な知識が読みやすくまとめていて、バイブルというタイトルもあながち大げさではないのかもしれません。乗り鉄というのは、鉄道に乗ることを主に楽しむということですので、広い意味でその楽しみの範疇である、駅そばや売店で売られる駅弁に関する記述が個人的にとても参考になりました。

軽井沢駅の「おぎのや」という立ち喰いそば屋はJR東日本の社員が選ぶ日本一おいしい立ち喰いそば屋に選ばれたことがある。とあるのですが、現在はどこが一番なのか気になります。

 「鉄道王たちの近現代史」小川裕夫著 イースト新書

「カラー版 乗り鉄バイブル」が鉄道の陽の面とすると、こちらはダークサイドと言ったところでしょうか。鉄道という巨大な資本が蠢く財界の闇を暴く!といった内容かとおもったのですが、よく見てみると割合ウンチク的な話のようです。

ただ、戦後日本の風景や街並が大きく変わって行った背景には、やはりここで語られているような財界人たちの思惑が深く関わっているのであろうという事は考えずにはいられません。

そして、そのような鉄道王たちとは無縁といっていい、市井の人々の生き様をルポした本がこちらです。

にんげんドキュメント 乗り物に生きる」 檀上完爾著 現代旅行研究所

昭和55年初版とあるので、ざっと四十年近く前の、ジャンボジェットのパイロットからトラック野郎まで、全部で16の職種の乗り物に関わる仕事をしていた人々が紹介されています。

その職種もバラエティに富んでいて面白いのですが、それを紹介する文章が映画のナレーションのようで印象的なので少し引用してみます。

”その少年からオーダーを受けたとき、大戸ひさ子はなんとなく妙な感じがした。席につくやいなや、まったく間髪をいれず少年はためらわずにいった

「ビーフシチュー定食!」

どう見ても小学生である。”

なんだか推理小説でも読んでいるような気になってしまいますが、この大戸ひさ子さんはその後、食堂車のウェイトレスから出世して、食堂長という役職に就くのです。

映画に例えると「鉄道王~」が黒澤明なら、こちらは山田洋次といったところでしょうか。

 「鉄道のスケジューリングアルゴリズム  コンピュータで運行計画をつくる」

(財)鉄道総合技術研究所 運転システム研究所著 エヌ・ティー・エス

この鉄道ダイヤというものは実際かなり厄介なものらしい、という話を以前TVのタモリ倶楽部で見た覚えがありますが、このような本を見るにつけ東京の鉄道は毎日よくやっているなとおもいます。内容的には正直チンプンカンプンですので、凄く難しいパズルを解いたりするのが趣味の方にお勧めです。それにしても、この本が書かれた12年前にはまだコンピューターは導入されていなかったようですが(この本はそのために書かれているようです)現在はどうなのでしょう?他人事ながら少し心配です。

 

今回のこの「遠くへ行きたい」というタイトルは、もちろん昔の旅番組からの引用ではありますが、正直なところ毎日こうして店番をして、店から外を眺めている心境とすこしダブらせたりもしているのです。

中野孝次の「清貧の思想」に、旅に生きた芭蕉に対して蕪村は日常の中から風雅を極めようとした、というような事が書かれていますが、少し大げさですが自分はそういう方向を目指せばよいのかなどと、ちょっと負け惜しみ気味に考えたりしています。

それでは最後に、そんなインナースペースの旅へ導かれるための一冊です。

「ホビーテクニック 鉄道模型レイアウト」 長真弓著 日本放送出版協会

実は以前、藤子文庫を「箱庭的空間」と評していただいた事があるのですが、その箱庭的というイメージをヒントにして、藤子文庫という空間を日々更新して行きたい、と今はそんなことを考えながら毎日店番をしています。

 

今回紹介した本はすべて藤子文庫のオンラインショップでも販売しています。サイトの右端にある[ 店舗内検索 ]の窓に書名をペーストするか、ノンフィクションのコーナーでご覧いただけますので是非そちらもご覧ください!

http://store.shopping.yahoo.co.jp/fujicobunco/